東京高等裁判所 昭和63年(う)210号 判決
被告人 近藤晋平
〔抄 録〕
所論は、要するに、原判決は、罪となるべき事実において、「被告人は、(中略)覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン若干量を注射又は飲用などの方法により自己の身体に施用し、もって、覚せい剤を使用したものである。」と判示したが、右の判示は覚せい剤の使用方法を特定していない点において理由を付さない違法がある、というのである。
そこで検討すると、原判決は、その罪となるべき事実中の被告人の本件行為として、「覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン若干量を注射又は飲用などの方法により自己の身体に施用した」旨判示し、その施用の方法が注射又は飲用のいずれであるかを具体的に特定していないことは、所論のとおりである。しかし、本件のように関係証拠上被告人の身体から覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンが検出され、これが被告人の施用行為に基づくものであることが明らかであるが、施用行為の具体的な方法について、被告人が施用の事実を否認したり、舐めただけで注射をしていないと供述したり、あるいは注射した事実を認めるなどその供述に変遷があるため、注射又は飲用のいずれであるかを確定できない特殊事情がある場合には、原判決のような択一的認定をしても罪となるべき事実の判示として不特定ないし不十分となるものではないというべきである。
したがって、原判決には所論の理由不備の違法はなく、論旨は理由がない。
(内藤 小泉 本吉)